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津軽じょっぱり 酒蔵巡り 《豊盃 三浦酒造さん》

2月12日 函館から青森で乗り換えて弘前へ。 車窓には延々とリンゴ畑の風景が続きます。
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弘前駅へ到着。レンタカーを借りてすぐに出発!
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今回の酒蔵巡りのスタートは『三浦酒造店』さん。

三浦酒造さんは弘前市から岩木山へ向かって、岩木川を渡った先にありました。
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三浦酒造さんは『豊盃』というお酒を醸造されています。

しかし、三浦酒造さんはHPがないどころか青森県酒造組合のHPにも情報がありません。

どんなお蔵さんなのか全くわかりません。 

持てる限りのコネクションを使って連絡を取ったのですが、「この時期の見学はすべてお断り」

との返事。 しかたないですよねえ。 ”ごもっとも”だと思ってます。

しかし、蔵元でお酒の販売はしているとのことなので、行くだけ行ってみました。

正面から見る限りは新しい造りですし、それほど大きくは見えません。
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門を入ってすぐの駐車場の隅には一時保管用なのか、コンテナが3本。 
気温が低い地方ならでは? さらに在庫回転がいいので長期間の保管は必要ないから?
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恐る恐る玄関へ・・・・ごめんください~~~
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玄関から入ると左が事務所。右側の棚には三浦酒造さんのお酒がずらりと並んでいます。
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最初にご対応いただいたのは、上品で若き女性。(蔵元のお嬢さんか、お嫁さんだと思います。)

蔵元さんに伺って感心するのは、ご対応いただく奥さまやお嬢様が本当に気品があって

皆さん本当に美人揃いなんですよねえ。 

これもお酒の効能なのかな?  お世辞ではありません。


棚のお酒からどれをいただこうかと迷っているのんべえが、よほど不憫に見えたのでしょうか?

お蔵の方へ走って行ってくださいまして、「ほんのちょっとなら」との条件付きで蔵の中で

入れていただけることに!   やった!!


靴をスリッパに替え、白衣を着て、頭をすっぽり覆う帽子をかぶり、手をしっかりアルコール消毒

してからお蔵のエリアへ入ることができました。

私が女性で化粧をしていたら、たぶんそれだけでNGだったかもしれませんね。


三浦酒造さんは蔵元の三浦慧さんの御子息、兄・剛史さんと弟・文仁さんの御兄弟が酒造りを

されています。案内していただいたのは剛史さんでした。

剛史さん、 「うちは杜氏さんに見放された酒蔵なんです。」

のんべえ、「は?」

剛史さん、「ぼくらが杜氏さんに向かって、ああしてほしい、もっとこうゆうふうに、といろいろ

注文をつけていたら、ある年の造りが終わったとき『来年からきません!』

と言われっちゃったんですよ。」

のんべえ、「ありゃー、『勝手にしろ!』ということですね。 でも他の杜氏さんを頼もうとは?」

剛史さん、「やはり杜氏さんの高齢化なんかもあって、自分たちでやることにしました。」

のんべえ、「でも、学校で醸造の勉強はされていたんですよね。」
            (確か、剛史さんは東京農業大学の醸造学科卒だったはず)

剛史さん、「そうなんですが、まさか自分が酒造りをやるとは全く考えてなかったんです。」

のんべえ、「突然じゃあ、大変だったでしょう。」

剛史さん、「父は全く造りの経験はないんで、弟と二人でなんとかやってきました。」


結果的にはこの事件が三浦酒造さんをいい方向に大転換することになったようです。

その後、短期間で平成17年・18年の観評会入賞を果たされ赤丸急上昇銘柄となっています。

今にして思えば結果オーライですが、きっと大変な状況だったと思います。


このようなお蔵は最近多いですね。 

杜氏さんには受け継がれた熟練の技があったり、杜氏集団としてのバックアップがあったりと

メリットもあるのですが、どうしても製造者に徹してしまい、ユーザーニーズに沿った酒造りが

しにくいというデメリットもあるようです。

本来は蔵元側がマーケティングを担当し、杜氏さんはそれを受けて製造を請け負うという姿が理想

なのですが、最近はマーケティングの重要性が大変大きくなってしまったため、従来の姿では間に

合わなくなってしまったのかもしれません。
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『お釜と甑』 比較的小ぶりだと思います。

伺ったのが午後3時ごろでしたので、本日の「蒸し」は終了していました。

周囲の道具類をみても、樹脂製のタライなどが目につきます。

木桶、木だるよりも清潔で使いやすいという合理性からの選択なのでしょう。

四国の『石鎚』さんを思い出します。 そういえばどちらも同世代で東京農業大学出身です。

のんべえ、「最近、随分人気のようですが、今の生産高は?」

剛史さん、「400石」です。 (一升瓶で40,000本分)

のんべえ、「もっと造っていいんじゃないですか?」

剛史さん、「今の設備では400石が限界ですね。それ以上作ると大きな投資が必要ですし・・・」

のんべえ、「400石が今の経済ロットということですね。じゃあ造りの期間をもう少し延ばしたら?」

剛史さん、「最近は昔ほど寒くないし、どちらかというと造りの期間は短くなってしまいます。」


400石では全国区でチョット売れるととても足りる量ではありません。

そのため、『豊盃』は販売店をかなり絞り込んでおられます。

年末には在庫がなくなることもあるようですが、残ってしまうよりもいいという判断のようです。

現在の蔵は3年ほど前に大改装されたばかりで、今は400石を大切に売ってゆくという方針

だそうです。 のんべえとしては賛成です。大変好感が持てますよね。

そのような大方針は家族みんなで話し合って決めるとおっしゃってました。
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ちょっとピンぼけですが『麹室(こうじむろ)』です。

なんと石造りの室です。内部は木造なのだと思います。(当然、覗くことはできません。)

外気の温度変化に対する断熱性を高めるために石で囲んだ構造なんですね。 

私はこのような室を見たことがありませんでしたが、厳寒のこの地方では珍しくないことが

この後の蔵めぐりでわかりました。 

弟の文仁さんは、この時も室の中で仕事中だったようで、お会いできませんでした。

周囲には精米済みのお米が温度・湿度をなじませるために、たくさん積み上げられていました。

『豊盃米』という『五百万石』の流れをくむ青森県産の酒米や、同じく『華吹雪』という青森県の

酒造好適米を多用されていることもあり、青森県産のお米がほとんど。

兵庫県産などではなく地元産の原料を使うというところも、いいですねえ。

三浦酒造さんが商標取得したこともあって、『豊盃米』を使っているのは三浦酒造さんだけに

なってしまったようです。ですから、現在は100%契約栽培となっています。

これらのお米の精米を自家精米で頑張っているところも、400石クラスでは珍しいと思います。

なにしろ精米は24時間ぶっ続け、休みのない作業です。 大変です。

このときも精米機は、お蔵の片隅のビニールの垂れ幕で区分けされたエリアで稼働中でした。
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タンクも新しいものばかりでした。 大改装の時に新しくされたようです。

サイズは大きくありませんでした。タンクのサイズで造りの単位がわかります。

やはり、蔵全体が400石サイズになっているんですね。

このサイズは家族経営で、一つ一つのタンクに眼が行き届き、丁寧なお酒造りができる最適な

サイズということなんでしょうね。 

すべての設備が100%稼働するということは、無駄なコストがかからないということ。

結果的に美味しいお酒が低価格で生産できるということですね。

三浦酒造さんの『じょっぱり』(頑固さ)はこの400石に表れていると感じました。

そういえば、会津若松の『会津中将の鶴の江酒造』さんや愛媛の『石鎚酒造』さんも、

東京農業大学出身の新世代が中心の家族経営で元気な酒蔵。 

なぜかみんな400石でした。

『これ以上大きくすると人を雇う必要が出てきて、味より売上拡大に走ることになる。』

これがのんべえ的な一つの結論です。


それともう一つ、三浦酒造さんで感じたこと。

首都圏ばかりを見た酒造りではなく、地元のお客様を大切にされていること。

その現れが普通酒『ん』です。 

普通酒も大切に造っておられることは素晴らしいと思います。

最近は特定名称酒比率、純米酒比率、吟醸酒比率などの高さを誇っておられる酒蔵さんも

おられます。 

それも素晴らしいことですが、自慢できる普通酒があるということは本当に素晴らしいと思います。

この『ん』は今発売中のdanchu3月号にも紹介されています。

もちろん、この『ん』も今回購入してきました。

まだ試していませんが、吞み始めると吞み過ぎが心配です。


どんな酒蔵さんかとヒヤヒヤドキドキしながらの豊盃・三浦酒造さんへの訪問でしたが、

極寒の津軽で、暖かくってチームワークのいい家族経営の、すごく素敵なお蔵さんでした。

忙しい時にお邪魔してしまって、本当にご迷惑をおかけしました。

ありがとうございました。




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by sakenihon | 2009-02-21 15:15 | 酒蔵めぐり  

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