津軽じょっぱり 酒蔵巡り 《カネタ玉田酒造 玉田陽造物語③》
51歳の『駆け出し杜氏』となった蔵元、玉田陽造さんでしたが、それから今年で18回の目仕込みとなりました。
東京農業大学で醸造学を学んだとはいえ、毎日、毎年安定した酒を醸すということは容易ではありません。
毎年、気候も違うし酒米の出来も違ってきます。
日々の温度変化も微妙にも大胆にも変わります。
十数年前、3年間冷害が続いて、米が大幅に不足したことがありました。
政府が緊急でタイなどからも米の緊急輸入を行いましたが、食米が10kgで1万円を超えた時です。
酒米も地元農家からは手に入らず、しかたなく他の地方から調達したのですが、
出来上がった酒には赤茶けた色が付いてしまっていて、どうやっても落ちなかったそうです。
『あの時はほんとに困ったよ』と初対面の私の語っていただきました。
しかし、肝心な『津軽の酒の味とは?』、『玉田酒造の酒とは?』という命題に、答えは見つかったのでしょうか?
残念ながら、お会いできた短時間の間に、そこまでは聴けませんでしたが、短い間の会話から私は勝手に下記のような想像をしています。
津軽らしい酒の姿がない。
先代から受け継いだ『玉田酒造の味』がない。
時代は『嗜好の分散』『顧客ニースの多様化』の時代。
いったいどっちを向いて酒造りをすればいいのか?
迷った結果たどりついたのは 『自分が納得できる酒を造る。』
今、玉田陽造氏が目指している目標はここだと感じました。
お客様の評価はもちろん重要ですが、何よりも『造り手が納得する』ことが重要との想いです。
しかしながら、『自分が納得できる酒を造る』ことほど難しいことはありません。
第三者から『こんな酒を造ってくれ』と言われたほうがどれだけ楽か・・・・・・・
自分が納得できる酒、納得できる味は日々刻々変化し進化しますし、迷いもでます。
ですから、69歳の今になっても玉田さんは『これでいいのか?』を毎日何回となく自分に問いかけます。
玉田酒造さんの玄関を入ると、昔ながらの土間が出迎えてくれます。
その土間の右側のガラス戸を引き開けると12畳ほどの事務所があります。
入ってすぐ(一番出入りしやすい場所)に玉田さんの社長席があります。
そしてそのすぐ脇に、お酒の日本酒度や酸度などを測定する道具が並んでいます。
玉田さんは今日の酒の具合を自分の席の横で計っては、五感でも確かめ蔵人とも意見を交わしながら、「明日はこうしてみようか」とか「これでいいかなあ」なんてつぶやいています
その光景は午後四時過ぎの仕事が落ち着いた頃に訪れた、私の眼の前でも繰り広げらました。
この時、玉田社長さんが気にされていたのが『旨味』。
『甘味』になるちょっと手前の『旨味』が出ているか?ということでした。
『甘い酒』と『旨い酒』とはほんのちょっと違いだが、まったく違うとおっしゃてました。
すごくわかります。同感です。
その日は『旨味』にもう少し『キレ』が必要なのでは?と悩まれていたようです。
ここまで悩んだその酒は普通酒でした。(正直、驚きました。)
こうして日々刻々進化し、停滞することがない酒造りが続いています。
そんな苦労を重ねながら、現在は新たに信頼できる蔵人さんも育ってきているようです。
なによりも御子息が次の時代を担うべく、父に近づこうと頑張っておられるのは何より心強いことです。
忙しい季節にお邪魔し、ご迷惑をおかけしたにも関わらず、貴重なお話をしていただけたこと心から感謝しております。
カネタ玉田酒造さんのお酒が、いつまでも地元の皆様に愛され、地元以外の呑んべえにも広く知られる日が来ることを!
津軽 じょっぱり! ばんざーい!!
玉田酒造は弘前城跡からも近く。さすが元藩士の蔵元!
春には桜の花びら舞う弘前城のお堀りも、今は堅い氷に覆われていました。
この氷が解け始める頃には、今年の酒造りもすべて終えていることでしょう。
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by sakenihon | 2009-03-02 00:59 | 酒蔵めぐり