津軽じょっぱり 酒蔵巡り 《熱き女性蔵元! 齋藤酒造》
私にとって忘れられない一軒になっていますので、是非紹介させてください。
黒石で”つゆやきそば”を一杯だけで我慢して、もう一度弘前に戻ったのは2月13日の
午後3時頃でした。
仕込み最盛期のために一度は断られていたお蔵さんに、前日宿泊した石場旅館の
石場創一郎氏から、再度ごり押しでお願いしていただき、「夕方ならば」の条件付きで
何とか蔵を見せていただけることになっていたからです。
向かったのは『齋藤酒造店』さん。
『松緑』というお酒の蔵元です。
弘前城の西、岩木川のほとりに位置する、こちらも巨大なお蔵さんでした。【地図】
蔵の周囲を車で一周したのですが、まさに1ブロックまるまるの広大な敷地です。
『松緑』という銘柄は敷地内の18本の松の古木の美しい緑からついた銘だそうです。
明治37年の創業ですが、その前身は江戸時代からの”酒母”を造る『もと屋』さんです。
『日本醸造協会』が生産する『協会酵母』やそれぞれの県の農業試験場などが開発した
『県酵母』を酒蔵が購入し、それを培養して酒造りをするのが現在では一般的です。
しかし、明治39年の日本醸造協会設立以前は、各地の『もと屋』がその機能を担って
いました。
そして、津軽地方のすべての酒蔵へ酒母を供給していたのがこちらの齋藤酒造さんだったのです。
日本酒造協会の設立にともない、『酒造業』へ転換し創業された酒蔵ということです。
残念なことに先代の会長さんが昨年亡くなられ、現在その歴史ある酒蔵を背負って立つのが、
女性蔵元土居真理さんと7人の蔵人。
地元弘前出身の若き杜氏さんを育てながら、土居さん自身も酒造りにも携わっておられます。
15時頃にお邪魔した私を迎えていただいた時、ようやくその日の戦いが終わってホッとした
というタイミングだったと思います。
土居社長の表情には疲れと眠さが少し現れていましたが、それでも私が知る”蔵の女性”の中で
屈指の気品ある美人蔵元でしたよ。(お世辞ではなく・・・(笑)。)
いつも感じることですが、酒蔵の女性というのは本当に美人揃いです。
やはり日本酒の効用なのだと思います。
しかし土居社長は美人というだけでなく『すっごいじょっぱり!』、が私の印象です。
お話の中に「意志の強さ」「こだわり」「かたくなさ」、のようなものが随所に感じられました。
まず道具に驚きました。
いったいいつから使われているのか?年季の入った木桶がいまでも現役です。
いまでも使える道具はすべて使うという方針のようです。
ほとんど機械化されてなく、昔のままの手造りが続けられています。
普通酒用の酒米の洗米も手洗いでやっているとのこと。 オドロキです。
蔵の中に6~8畳ほどの小上がりの畳敷きの部屋があり、ストーブが燃えています。
蔵人さんの居所として使われています。 昔のままの蔵人の生活がそこにはあります。
夜は2時間おきに発酵の具合を見ながら手を掛けるという作業も崩されてはいません。
実はこれも、ちょっとした機械化で省略することができるはずなのですが・・・・
時代の趨勢でしょうか、残念ながら生産量は減ってきているようです。
が、その分手間を掛けて丁寧な酒造りをされている印象でした。
お酒の簡易包装についても早くから留意されていて、瓶を包んでいる和紙のようなものは
全廃されていました。
こういうところは大変女性らしい気配りだと感じました。
こちらの麹室は土蔵の中でした。 天井の梁の太さにもご注目!
土居社長との会話で印象深かったのが、『御神酒(おみき)』へのこだわりです。
酔うためのお酒ではなくて、神様に捧げる御神酒を
造りたいと、繰り返しおっしゃってました。
御神酒は日本酒の原点です。
たとえば秋の収穫を神様へ感謝する奉り(祭り)ごと
の際に、神様に奉納したお酒の一部を分け頂く
というのが古代の飲酒の原型です。
普通に飲んで酔うためのお酒と、神様に供える
御神酒とでは造り手としての想いが違うのだそうです。
少しでも多くの神社に使ってもらえるよう、御神酒を
大事に造り続けていきたいと語っておられました。
それからもう一つ。
齋藤酒造さんには『刑事(デカ)』というお酒があります。
2001年5月に武富士弘前支店で発生した放火殺人事件をご記憶でしょうか?
この『刑事(デカ)』はこの事件の捜査に当たる、弘前警察署の刑事さんたちへの
ねぎらいの想いで造られたお酒だそうです。
昨年、弘前警察署から感謝状が贈られています。
土居真理さんという蔵元さんに接して、こちらのお酒が非常に楽しみになりました。
勢いで一升瓶で3種類購入。
【左】 松緑 普通酒(上撰) むつほまれ 65% 1995円 手洗い洗米の普通酒に興味。
【中】 大吟醸 麗峰 華吹雪 50% 3500円。 真理さん一押し。
【右】 松緑 辛口しぼりたて生 むつほまれ 65% 1995円 季節柄、生ははずせません。
辛口しぼりたて生は既にいただきました。
辛口と表示はありますが、大変あっさりした口当たりながら、甘さも十分感じるお酒。
土居さんらしい、やさしさを感じます。(って、ご本人に会った者だけが感じられる特権です(笑)。)
本当に忙しい時にお邪魔しご迷惑を御掛けしたのですが、私が帰る時には土居社長自らが表へ
出てきてくださって、私の車が走りだすまで見送っていただきました。
感謝 感謝で、運転しながら心の中で手を合わせる想いでした。
今回の津軽の酒蔵巡りは最後の最後まで最高の旅でした。
御世話になった皆様に心から感謝しております。
ん~~~、もう一度行きたい!
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by sakenihon | 2009-03-15 20:23 | 酒蔵めぐり