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「武家の文化」と「庶民の文化」

先日、江戸時代の武士階級は大変だった~~という話題でしたが、これに対しての一般庶民(町民・農民)はどうだったんだろう?ということも考えてみました。

テレビの時代劇のように、悪代官だの悪徳商人だのが横行して、庶民にとっては大変住みにくい時代だったというのは、どうも違っていたのではないかな?と思うようになりました。
江戸期の武家社会は”悪徳代官”をのさばらせるような甘い社会ではなかったように思うのです。
なにしろ何かあったらお家断絶・取りつぶし・切腹なわけですから、現代の政治家や官僚や特殊法人に対する規制よりもずっと厳しかったと思います。

これに対して農民は制度上では、生まれた土地から勝手に移動することも許されず、職業選択の自由もなかったようですし、生かさず殺さず働かされて一生を終えるという辛い人生が庶民の姿だったようなイメージもありました。
しかし、それも江戸の初期までで、中期以後は徐々に変わっていたように思います。

農業の発達、収量の増加、経済・流通の発達などの影響で年貢米以上の収穫が得られたり、稲作以外の副業で現金収入を確保できる地域が多くなってきたようです。(地域によって例外もありますが)
たとえば、酒造の杜氏制度もそのような副収入の一つと言えるでしょう。

そのような流れの中で”タテマエとホンネ”を使い分ける余裕が生まれたようです。

わかりやすい例が『旅』です。
江戸期の庶民には勝手に旅をすることは原則として許されてはいませんでした。
しかし、例外として『お伊勢参り』や『善光寺参り』など宗教的に認められた旅行はあり、事前に庄屋などを通して届けておけば許されたそうです。
たとえば東北地方からのお伊勢参りとなれば2~3か月かかったでしょう。かなりの長旅となりますが、それでも可能でした。(ただし、経済的にも一生に一度がやっとでしたが・・・・)

『お伊勢参り』『善光寺参り』などの宗教色は”タテマエ”の理由であり、”ホンネ”では物見遊山の旅行だったようです。途中の名所に寄ったり、江戸や大坂、京都などを観光したりしながらの旅行です。

先日の江戸東京博物館で歌川広重の『東海道五十三次』が特別展示されていました。
『東海道五十三次』には庶民の旅の風景が多く残されています。
その中の一枚です。(クリックで拡大できます。)
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とある宿場町の旅籠の前で二人の旅人が女たちから強引な客引きをされている絵です。まるで現代のキャバクラかぼったくりバーのようです。

次の絵は旅籠の中の様子です。
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左側の部屋では寝転がってキセルを加えている男客へ飯盛り女(めしもりおんな)が食事を運んでいます。
そして、右の部屋では女たちが鏡を見ながら化粧をしています。これは娼婦に近い飯盛り女の接客前の風景だそうです。
各旅籠には飯盛り女として食事などの世話をしながら、夜は娼婦として働く女性がいたそうで、男性客にとっては旅の楽しみの一つだったのです。 『お伊勢参り』の”ホンネ”部分の一風景です。

こうして、伊勢にたどり着いた旅の一行は『御師(おんし・おし)』と呼ばれる伊勢神宮公認旅籠に出迎えられ、数日の間は神楽や宴会、内宮・外宮参りなどすべて御師によって一生に一回の大歓待を受けるのです。
このときの食事は”十の善”まであるような豪華なもので、山海の食材が朝に夕に並んだそうです。

御師の館は伊勢神宮の周辺に200~300軒もあったそうで、日本における初めての旅行総合業でありました。
多くの宿泊客を一度に風呂に入れ、食事をさせるために、『大浴場』が生まれたのも、現代のような宴会の風俗が生まれたのも御師の館から、との説もあります。

また、日本人の旅行に欠かせない『お土産』の起源もこのようなお宮参りに関係があるようで、『おみやげ』の”みや”=”宮”だそうです。


脱線してしまいましたが、家格や規律、武士道などに縛られた武家社会とは随分違って、江戸期の庶民は”タテマエ”と”ホンネ”を巧みに使い分け、結構伸び伸びとした部分を持っていたように感じます。

現代の日本人も、気真面目でお堅い部分と、羽目を外すと”無礼講”も許されてしまうような柔らかい部分を併せ持っているようですが、それは江戸期の武家社会文化と庶民の文化が明治期以降混然となって形成された文化なのかもしれないな、と勝手に解釈している今日この頃です。



『おみやげ』とお酒も関係が深いものだそうですので、『おみやげ』についてはまた後日。

参考文献 『江戸の旅文化』 神崎宣武著 岩波新書


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by sakenihon | 2009-04-19 01:31 | 日本の歴史  

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