たかが水、されど水、忘れちゃいけない『水』のはなし
興味のない方には退屈な話題ですが、今後いろいろな酒蔵を紹介するときに不可欠な項目ですので我慢してくださいね。
日本酒造りにおいても米と同じくらいに重要な材料となります。
日本酒を造るための水は『仕込み水』と呼ばれます。
お米は遠くから運ぶことも可能ですが、水はそうはいきません。
酒蔵のある場所の水がその場所の酒の味の個性となります。
水に含まれるマグネシウムやカルシウムなどの鉱物が酵母菌のエサとなりますので、その含有量がお酒の味に大きく影響します。
マグネシウムやカルシウムの含有が多いものを硬水といい、少ないものを軟水といいます。
硬水は舌ざわりがザラザラして、ちょっとチクチク感じることもあります。
軟水は舌ざわりが柔らかくなめらかに感じます。超軟水は「ぬるっ」とした感触さえあります。
本来では硬水の方が酵母にとってエサが豊富な水ですので、お酒造りに向いています。
灘が江戸時代の最大の酒造地域となったのも、灘の水が六甲山の岩盤の鉱物を含んだ硬水であったためだそうです。
硬水で造った日本酒はアルコール発酵のスピードが速く、すっきりした辛口の酒ができます。
これに対して京都伏見は軟水です。
軟水でゆっくりと発酵させるとやわらかな旨味の強いお酒が造りやすいようです。
江戸時代は軟水で日本酒を造るのは困難でしたが、現在は技術の進歩や温度管理の発達によって軟水での酒造りが可能になりました。
そればかりか軟水によるゆっくりとしたアルコール発酵が吟醸酒造りに向くことから、最近では軟水のほうが酒造りに向いているとさえいわれます。
軟水にマグネシウムやカルシウムを人工的に加えることは容易、という観点からも軟水の方が扱いやすいともいえるようです。
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【獺祭の仕込み水】
私が今まで味わったなかで最も柔らかいと感じたのは、獺祭で有名な山口県の旭酒造さんの仕込み水です。
検査室の中の蛇口から直接に飲んだ、その水の舌触りの柔らかさには驚きました。
獺祭の酒質の滑らかさは精米だけではなく、仕込み水にも秘密があると確信しました。
市販されている水は火入れされていますし、ペットボトルの臭いが移ってしまうこともあります。
酒蔵に行くことがありましたら、是非湧き出す清水を直接口にしてみてください。
酒蔵には玄関先に井戸があるところもあり、近所の住人の皆さんが自由に持ってゆくことができます。

この写真は広島県西条市のとある酒蔵の前で、ペットボトルに水を汲んでいる近所の方の風景です。
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硬水、軟水の度合いを表すのは「硬度」という指標です
硬度の表し方には「ドイツ硬度」と「アメリカ硬度」があります。
現在ではアメリカ硬度が一般的で、市販のミネラルウォーターなどにはすべてアメリカ硬度で表記されています。
しかし、第二次世界大戦前まではドイツ硬度が一般に使われていたため、日本酒造りの世界では今でもドイツ硬度を使われることが少なくありません。
アメリカ硬度(ppm)の計算方法(含有量は一例)
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カルシウム x 係数 + マグネシウム x 係数 = アメリカ ドイツ
含有量(mg/L) 含有量(mg/L) 硬度 硬度
13 2.5 6.4 4 58 3.25
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ドイツ硬度(dH)=アメリカ硬度(ppm) x 0.056
硬度とは『炭酸カルシウム(CaCO3)が1リットル中に含まれているmg数』
アメリカ硬度 ドイツ硬度
軟水 0~60 0~3.3
中程度の軟水 61~120 3.4~6.7
硬水 121~180 6.8~10.0
非常な硬水 181以上 10以上
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by sakenihon | 2008-10-30 21:16 | 日本酒の作り方